ホラー映画「シャイニング」の主人公が狂った理由

洋画

キューブリック監督のシャイニング

小説家であるジャックは空想家である可能性も高いので「鏡の外の妄想世界=ジャックの空想世界」かもしれません。ダニーがトニーに見せられた「双子や血をふきだすエレベーター」はシャイニングによる警告だとも解釈できます。

『シャイニング』の劇中では様々な場面でインディアンにまつわる会話や、映像表現がなされています。オーバールックホテルは先住民の墓地であった場所に建設されていますし、ホテル内の装飾も、ナバホ族やアパッチ族のモチーフが使用されていました。またこのホテルに漂う不穏な空気。これこそがこの映画の恐怖の肝、と言っても過言では無いでしょう。インディアン、即ちネイティブ・アメリカンの呪いを感じずにはいられない演出。キューブリックはこれを直接的にセリフでは言い表さず、視覚的イメージなどを用いて暗喩しています。例えばジャックがシャワールームのドアを 打ち割る時の凶器は、インディアンが使用していた斧と同じものです。ジャックは建物の呪いをもろに受けている存在ですから、その怨念や狂気が彼に乗り移り、斧を使用したのだと考えられます。

『シャイニング』で期待すべきホラーは暴力やおどろおどろしい悪霊では無く、水面下に確かに潜む絶大で邪悪な脅威の正体に想像を膨らませ、その禍々しい存在に震え上がること。

吹雪の中、迷路に迷い込んだジャックは為す術も無く凍死してしまいますが、オーバールック・ホテルのホールに飾られた1921年に撮影された白黒写真には、ジャックが笑みを湛えて写り込んでいます。キューブリック監督は、ジャック・トランスは過去の人物が転生したキャラクターでオーバールック・ホテルに回帰せざるを得ない運命にあると述べていますが、ジャックがオーバールック・ホテルの一部と言えるヒントは『シャイニング』で随所に鏤められています。ダニーがカートに乗り、屋内を走り回って遊ぶシーンでは、カメラがダニーの背後を浮遊する様に後を追います。ダニーを追うこの”眼”は、狂ったジャックが迷路の中でダニーを追うシーンでジャック自身の目線として表現され、邪悪な意思を持つオーバールック・ホテルとしてダニーに牙を向けようとしている事が分かります。

『シャイニング』は雨や雪が降りしきる暗夜に、集中して堪能して頂く事をお勧めしたい映画でした。

どこがドでどこがソかというのを意図的にわからなくするという現代音楽(もう100年ぐらい経っているが)の手法をホラー映画に使うのは歴史が古い。1941年の『狼男』(ジョージ・ワグナー監督)の音楽(ハンス・J・サルター、フランク・スキナー作曲)はドビュッシーやベルクっぽいし、『シャイニング』より20年も前に作られたヒッチコック監督の『サイコ』(1960)でバーナード・ハーマンが書いた音楽などは、それだけ聴けば完全に現代音楽だ。

完璧主義者として知られるキューブリックは、撮影現場でも妥協がありません。ロケ中は何十テイクも繰り返し、納得のいく演技を俳優に注文する為、ある意味俳優やスタッフには過酷な労働であったようです。例えばジャックがバスルームの扉を斧で叩き割る、たった2秒のシーンに190テイク以上も繰り返したと言われています。撮影に2週間も費やされたこのシーンは、シャイニングの中でも1番のみどころとなりました。ジャック・ニコルソンのあの狂気じみた名演技は、リテイクを繰り返したことによる疲労から引き出されたものだとも言われています。

またオーバールックホテル内の描写にも、この様な左右対称構図は度々登場します。一般的には美しいと言われるシンメトリーですが、この様に意図的に作られた左右対称の構図は返って不自然であり、冷め切った不穏な空気を感じさせられるものです。例えば双子の女の子が、廊下に立っているシーンなどは、典型的です。この場面は双子が美しく、またホテルの装飾も完璧である事から、逆に不気味で不快感を与えるシーンとも言えます。美しさとぞっとするような醜さが共存するシーンとして、『シャイニング』の中でも特に印象的シーンと言えるでしょう。

そして『シャイニング』では、バルトーク、リゲティ、ペンデレツキの作品が使われている。上述のように『シャイニング』の場面が引用されている『レディ・プレイヤー1』では、アニメ・ファンがガンダム、特撮ファンはメカゴジラの登場に興奮したように、クラシック音楽ファンはバルトークの《弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽》に、おおおおおっ、とテンションが上がったはずだ。

『シャイニング』の演出と同じく矛盾の様ですが、マイナスするとすれば、難解で繊細な表現を拾い切れないと真価を楽しめない事です。気楽に観ても圧倒的な恐怖も感じなければ、感嘆するストーリーでも無い。曖昧故に漠然とした気持ちの悪さばかりが残り、胸に重く垂れ下がります。しかし、キューブリック監督に劣らぬ活眼を持って『シャイニング』を観れば、その魅力は充分に楽しめるはず。

一方で、2017年以降に「劇団シャイニング(舞台)」として上演された3作品に出演したのは、「うたプリ」のアイドル達ではなく、“2代目キャスト”たちとなる。

キューブリックの何事にも妥協しない態度は、俳優陣だけでなくセットにも表れています。ラスト間際の屋外の迷路のシーンで降り積もった雪には、約900トンもの塩が使用されました。監督だけではなく、俳優やスタッフの涙ぐましい努力や苦労があってこそ、『シャイニング』は後世に残る名作になったと言えるでしょう。

原作者スティーヴン・キングが語るキューブリック版『シャイニング』との違いとは?映画『ドクタースリープ』ロングインタビューが到着!

「劇団シャイニング(原作)」が初演、「劇団シャイニング(舞台)」がキャスト・スタッフを一新した再演版、だと思ってもらうと分かりやすいだろう。

モダンホラーの傑作として名高い、1980年公開作品『シャイニング』。

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