2021年に劇場公開された『花束みたいな恋をした』の予告編動画は、こちら
東京・京王線の明大前駅で終電を逃し、偶然に出会った大学生の麦と絹。
あっという間に恋に落ちた二人は、大学を卒業してフリーターをしながら同棲を始めた。『花恋』は、いつでも二人で一緒にいた”最高の5年間”を描いた不滅のラブスト―リー。
これはきっと私たちの物語
物語は、二人の学生が出会うところから始まる・・・偶然に出会った、大学生の麦と絹
「終電を逃した21歳の大学生が、始発までの時間を過ごす中で恋に落ちていく」。
そして愛し合い・・・二人は同棲生活を始める。
という 日常生活に根差した本作の始まりは、多くの観客にとって“あの時“あったかもしれないと思える、あるいは経験した”もの“、もしくは “学生時代 周りであったぽい話”であり、物語の導入として自然に描かれています。
愛だけでは食えない!残酷な現実
同棲を始めた二人は、生活費を得なければならない・・・しかし、就活の苦しさや同棲生活のすれ違いが発生していく。
楽しく生きたいと言う絹に対し、趣味よりも生活する為の収入が大事だと言う麦。
そして 麦はイラストレーターの夢を諦め、物流サービスの会社に就職する。
そして 二人の共通言語であった「カルチャー」も いつしか離れていく。
という 端的に言えば観客それぞれの生々しい現実生活と重なる部分が多く、本作は「自分事化」して観てしまう流れになっているのです。
大ヒット御礼!興行収入35億を突破
本作は、近年の恋愛系邦画作品の中でも、稀に見るスマッシュヒット作品といえそうです。
なぜ『花束みたいな恋をした』は、“想像以上のロングヒット”を記録したのでしょうか?
それは都市に暮らす平凡な若者の、彼らの周辺にいくらでも見いだせるリアルな恋愛模様が展開されているから・・・そして「いつか味わった恋」を追体験させてくれるのです。
二人はなぜ恋に落ちたのか?
それは好きなものが同じであったから・・・お互いが同じ”神”(押井守)の信仰者であったことを知るのでした。
自分が大切に思うものは、相手もまた大切にしていると・・・つまり価値観の一致が二人を結びつけたのです。
押井守(おしいまもる)は、日本の映画監督・アニメーション演出家・小説家・脚本家・漫画原作者・劇作家などのポップなマルチクリエイターとして知られています。
二人の出会いは運命?
押井守本人が同じ居酒屋にいるのを見つけた麦や絹は感動するが、二人と一緒に飲んでいる社会人の男女はピンときていない?
その女性は「最近観た映画はジブリ」だと語り、男性は『ショーシャンクの空に』(1994年)をマニアックな映画だと話している。
そういうことから、麦と絹は日本人の大多数から見れば“マニアック”な部類の趣味嗜好を持っていると思い、だからこそ二人の出会いは運命だと感じることになるのでした。
『花束みたいな恋をした』あらすじ
東京の大学生・山音麦と八谷絹は、ある夜に終電を逃し明大前駅の改札で偶然に出会う。
話してみると、信じられないくらいに趣味が一致していることに気づき、意気投合する。
大学を卒業して、最寄駅まで徒歩で30分かかる多摩川沿いの部屋で同棲を始めた二人は、少ない実入りのフリーターをしながら、好きな音楽や映画に囲まれる生活を続けていく。
しかし、就活の苦しさや同棲生活のすれ違いが発生し、楽しく生きたいと言う絹に対し、麦は趣味よりも生活収入が大事だと言う。
そして麦はイラストレーターの夢を諦め、物流サービスの会社に就職する。
いつしか二人は、現実や生活に追われることで、分け合う行為に喜びを見出せなくなってしまい、相手が求めていることすら見失ってしまう・・・そして二人は。
普遍的な勘違い
麦と絹は、自分たちがポップカルチャーによって一般の人とは違う高みに到達しているという幻想の中で暮らしていたのです。
そしてラストでは“自分たちがいかにありふれた存在だったか”ということをまざまざと見せつけられるのでした。
『花恋』が描き出したのは、いくつかの世代に共通する“普通”になることへの忌避や葛藤、そして自分が非凡な存在であるという普遍的な”勘違い”を2010年代のポップカルチャーに傾倒する世代が見る世界を表現した”普通の物語”だと理解することができます。
地面に根を張っていない、見た目は美しい”花束みたいな恋をした” でも・・・枯れた花束は捨てるしかない。
しかし、その美しさはいつまでも残り続けるのです。
キャスト
菅田将暉、有村架純、清原果耶、細田佳央太、韓英恵、中崎敏、小久保寿人、瀧内公美、森優作、古川琴音、篠原悠伸、八木アリサ、押井守、Awesome City Club PORIN、佐藤寛太、岡部たかし、オダギリジョー、戸田恵子、岩松了、小林薫などが出演。
若者の周辺にあるリアルな恋愛模様
本作では都市に暮らす平凡な若者の周辺にいくらでも見いだせる恋愛模様が展開されています・・・そして、このリアルさに日本社会の暗い影が色濃く反映されているのです。
そして『花恋』は、ある世代の若者が、厳しい現実に接続され折り合いをつける姿をリアルに描いているのです。
作品情報
製作国:日本
監督:土井裕泰
上映時間:124分
劇場公開日:2021年1月29日
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