映画『誰が為に鐘は鳴る』: 時を超えた愛、名言、そしてヘミングウェイの遺産

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スペインの人民戦線に身を投じた米国人ジョーダンは、ファシストに両親を殺されたマリアと恋に落ちる・・・だが壮絶な戦いの中で、彼らの恋は悲劇的な運命をたどる。

内乱のスペインを舞台に、壮大なスケールと鮮烈な感動でつらぬく永遠の戦争大ロマン!

ノーベル賞作家 アーネスト・ヘミングウェイ文学の完璧な映画化。

目次

内乱のスペイン

1973年・スペイン陸軍の将軍グループは、民主的に選出されたスペイン第二共和国政府に対し反旗を翻しクーデターを起こした・・・イデオロギーの対立と武力衝突

その内戦は1939年まで続きスペイン国土を荒廃させ、共和国政府を打倒した反乱軍の勝利で終結し、フランシスコ・フランコに率いられた独裁政治が樹立された。

その体制は1975年のフランコの死まで続き、スペイン内戦はフランコに味方したナチス・ドイツも力をつけ、その後の第二次世界大戦へとつながる戦争の前兆でもあった。

義勇軍の戦い

この戦いに際し、共和国側の人民戦線を支援する兵士が世界各地から参集し国際義勇軍となり反乱軍と戦ったが、物量に勝るフランコ側が有利となった。

義勇軍に参加したアメリカ人の教授ロバート・ジョーダンは、ゲリラ隊の本拠に赴くが、ファシストに両親を殺されたマリアと恋に落ちる・・・そして山峡の橋の爆破を命じられた。

惹かれ合う二人・・・だが、彼らの恋は悲劇的な運命をたどることになる。

ヘミングウェイも戦争に従軍

闘牛に魅了されスペインを愛した作家のヘミングウェイも、1930年代には人民戦線を助けるべくスペイン内戦にも参加し、共和国派の資金調達にも尽力しました。

その自らの経験をもとに 書き上げた長編小説が『誰が為に鐘は鳴る』です。

若きヘミングウェイは高校卒業後に新聞記者として働き、また特派員記者として数々の戦争に従軍しています。

第一次世界大戦中にはイタリア戦線の従軍記者として活動し、その自らの戦争実体験をベースにした初の長編小説「武器よさらば」が世界中から高い評価を得てからは、次々に話題作を発表するベストセラ―作家となっていきました。

『武器よさらば』は、戦時中のイタリアを舞台にアメリカ人の兵士とイギリス人の看護婦との恋を描き、戦争に翻弄される若い男女が辿る衝撃のラストが見どころで、1957年にロックハドソンとジェニファー・ジョーンズの出演で映画化されました。

文豪アーネスト・ヘミングウェイ

ヘミングウェイのイメージ画像

アーネスト・ミラー・ヘミングウェイは、アメリカ出身の小説家・詩人。

その独特でシンプルな文体は、冒険的な生活や一般的なイメージとともに、20世紀の文学界と人々のライフスタイルに多大な影響を与えました。

ヘミングウェイの文章は非常にシンプルで、読み始めると止まらなくなるような特徴があり、作品の数々も映画化されています。

戦後はキューバに渡り、1952年に発表した『老人と海』でピュリツァ―賞を受賞し、1954年にはノーベル文学賞を受賞しました。

ノーベル文学賞は文学の分野において理念をもって創作し、最も傑出した作品を創作した人物に授与される賞で、日本では「雪国」や「伊豆の踊子」で知られる川端康成が受賞しています。

同名小説を映画

ヘミングウェイ原作小説による映画化作品には、「戦場よさらば」(1932年)、「殺人者」(1946年)、「破局」(1950年)、「キリマンジャロの雪」(1952年)等々があります。

ピュリツァ―賞を受賞した『老人と海』(1958年)は、巨匠ジョン・スタージェスが忠実に映画化し、名優スペンサー・トレイシー演じる孤高の老人とカジキの闘いを軸に、老人の人生と偉大なる自然が描かれました。

アフリカ大陸の最高峰キリマンジャロの頂上に、豹の遺体が干からびてずっと凍っていると言う・・・なぜ豹はそこにたどり着いたのか? 知る者はいない。

『キリマンジャロの雪』は、アフリカの雄大な自然が描かれている作品で、自然を愛したヘミングウェイならではの繊細な心境が描かれています。

本作は1952年にグレゴリー・ペック、スーザン・ヘイワード出演により映画化。

戦争メロドラマの傑作!

『誰が為に鐘は鳴る』は、ヘミングウェイが自らスペイン内戦に参加した経験をもとに書き上げた同名小説の映画化で、戦時下で燃え上がる男女の恋を描いたメロドラマの傑作!

マリア役は決まっていない?

映画スタジオ・パラマウント社が当時の最高額である15万ドルで小説の映画化権を取得し、製作・監督は数多くの大ヒット映画を手掛けたサム・ウッドが務めることになりました。

しかしこの時点でマリア役はまだ決まっておらず、スーザン・ヘイワードやポーレット・ゴダードなど数人が候補にあがっていたが、元バレリーナのヴェラ・ゾリーナが抜擢。

ところがシエラ・ネヴァダ山脈の険しい山の上での撮影が始まると、元バレリーナのリゾーナは怪我を恐れて演技に集中できないことから、半月程で降板させられました。

その後イングリッド・バーグマンにマリア役が決定し、1ケ月遅れで撮影が再開されました。

全米で最大のヒット!

本作の製作は結果的に3年近くを費やし、300万ドルの巨費を投じた超大作はその年に全米で公開映画の中で最大のヒット作ともなり、日本では当時人気NO.1のクーパーとバーグマンの共演作ということも話題となり大ヒットしました。

アカデミー賞9部門でノミネート

第16回アカデミー賞では作品賞、演技賞、撮影賞など合計9部門でノミネートされ、ゲリラのピラー役を演じたカティーナ・パクシヌ―が助演女優賞を受賞。

当時のハリウッドの大スターゲイリー・クーパーイングリッド・バーグマンという美男

美女スターの共演が哀切な物語を盛り上げます。

長身2枚目俳優のゲイリー・クーパー

190センチという長身の俳優ゲイリー・クーパーは、ハンサムで二枚目だけどその佇まいは純情でシャイな雰囲気がありました。

『真昼の決闘』(1952年)では、これまでヒーローとして描かれてきた保安官を、町の人々から見捨てられた孤独と敵への恐怖を抱える一個の人間として描き直した西部劇で、孤立無援の主人公をリアルに演じています。

『昼下がりの情事』(1957年)は、パリを舞台にしたロマンチックコメディで、お金持ちの紳士クーパーの渋い中年の魅力と、ヘップバーンのチャーミングな仕草が素敵です!

バーグマンの輝くばかりの美しさ!

恋するマリアを演じたイングリッド・バーグマンのハットするほどの美しさと笑顔が満載。

最初の固い表情から、クーパーとの関係が深まるにつれ笑顔が増大、クローズアップも増大し彼女の緑色の瞳が見られてうれしい!

本作の原作小説を読んで、マリア役を強く熱望したバーグマンは、『カサブランカ』の撮影終了後、伸ばしていた自慢の髪をバッサリ切って原作者であるアーネスト・ヘミングウェイの自宅に押しかけ同然で自分を売り込み、マリア役を掴んだという。

『誰が為に鐘は鳴る』あらすじ

1937年5月・スペインでは軍部によるクーデターが勃発し、フランコ将軍率いる反乱軍と共和国派の人民戦線政府が戦っていた。

この戦いに際し、共和国側の人民戦線を支援する兵士が世界各地から参集し、国際義勇軍となり反乱軍と戦った。

アメリカの大学教授ロバート・ジョーダンは人民戦線派に身を投じ、フランコ政権に対するゲリラを行なっていた。

ジョーダンは敵の軍用列車を爆破したが、その後新たな任務を命じられた。

彼に与えられた新しい任務は、政府軍の軍事輸送の補給路を断つために、山間の峡谷にかかる鉄橋の爆破で、期限は3日後の未明と定められた。

ジョーダンは同志のジプシーを連れ、山間に巣食うジプシーのゲリラに援助を頼むためその本拠を訪れた。

ゲリラの頭はパブロという男で、かつては人民戦線派の闘士だったが、今では殺人に対する懐疑から闘志を失い、妻のピラーや手下に牛耳られている有様だった。

またこのアジトには、右翼にはずかしめを受けて救われたマリアという娘もかくまわれていた。

一目惚れ!

マリアとジョーダンは、一目みてお互いが情熱的な思慕を抱いた。

マリアと入れ替わりでパブロの女ピラーが顔をだした。

しかし、ジプシーの血が混ざっているピラーは ジョーダンの手相を見て顔を曇らせた。

ピラーはジョーダンの手相に死を予見して、2人の恋を成就させてやりたいと願ったが、腹の読めないパブロの態度や、馬の調達などでジョーダンには恋に酔う暇はなかった。

馬を調達できると安心したジョーダンとマリアは次第に愛し合うようになった。

しかし、馬の調達を引き受けたジプシーの頭目エル・ソルドは右翼軍に包囲され、爆撃を受けて死んでしまう。

ジョーダンはエル・ソルドを救けるわけにはゆかなかったが、パブロは恐ろしさのあまり鉄橋爆破用の機械を焼いて逃亡してしまった。

4日目の朝

若い2人の恋の夜も明けて、ついに橋爆破をする朝が来た

改心したパブロも馬を連れて戻ってきた。

やがて彼は敵の作戦が変更となり、任務である橋の爆破が無意味になる事を知ったが、無駄になる事を知りながらも橋を爆破することにした。

一隊は二手に分かれて警備隊の詰所を襲い、ジョーダンとアンセルモは手ずから鉄橋にダイナマイトを仕掛けて、敵戦車が通過する直前に爆破した。

戦闘でアンセルモは死に、ゲリラ隊は敵の面前を駆け抜けて逃走しようとした時、一弾がジョーダンの足を打ち砕いた・・・もう歩けない!

死を悟った彼は、泣き叫ぶマリアを一行とともに先に逃がしたのち、ひとり敵軍に向けて機関銃の引金を引くのだった・・・。

壮絶なラストシーンとロバートの名セリフ

ラブロマンスの名作カサブランカでは、”君の瞳に乾杯”や ”愛しているから・・・だから行ってほしい、君は彼の一部なんだ” などの名セリが散りばめられています。

本作でも ”ねえ、キスしたいけど・・・どうすればいいの?鼻が邪魔にならないかしら?”

と言うシャレた会話や、”会う前から貴方が好きだった”と言う名セリフがあります。

ラストでは追っ手から逃れる途中、ロバートは落馬して足を骨折し死を覚悟する、しかし一緒に残ると言い張るマリアに仲間と逃げるようにロバートは説得する。

その時 ”僕は君の中に生きている。さよならじゃないんだよ!”という別れのセリフも!

タイトルの意味

本作『誰が為に鐘は鳴る』のタイトルは、「愛し合う二人のために鐘は鳴る」などと、意味を取り違えるかもしれませんが、原文は17世紀のイギリスの詩人・聖職者ジョン・ダンの説教「ゆえに人を遣わして問うなかれ、誰がために鐘は鳴るやと、そは汝のために鳴るなれば」の一説を引用し、「個人は人類の一部であり、他の人の弔鐘はあなたのためにも鳴っている」という意訳があります。

ここで言う「鐘」は、人の死を知らせる教会の鳴らす「弔いの鐘」を意味しています。

誰が為に鐘は鳴るのか

教会の鐘を鳴らすのは、死者を「弔う」という意味合いもあります。

世界では無意味な戦争で、多くの人々が亡くなっています。

遠くで死んでいる誰かの死は自らの死に等しい、なぜなら私もまた人類の一部だからです。

それは他人事ではなく、自分の身近なことで捉えることが大事だと説われています。

誰が為に鐘は鳴るのか・・・それは、あなた自身のためにも鳴っているのです と。

作品概要

製作国:アメリカ

監督:サム・ウッド

上映時間:170分

劇場公開日:1952年10月1日

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